Gride

gettyimages/1164470443

ゴルフスイング

Nick Jagger

グリーン上で「上り下りの距離感」をつかむ裏ワザ

プロのトーナメントではもちろん、最近は私たちがプレーをする一般営業のゴルフコースでも、キャディーマスター室に「本日のグリーンの速さ 9フィート」などと表示するところが増えてきました。

この「9フィート」という数字は、スティンプメーターという滑り台のような計器で測った数値で、一般にごく普通にプレーするコースで8~9フィートくらいです。

9.5フィートになると、アマチュアゴルファーにとっては「ちょっと速い」と感じる人が増えてきます。

これがプロのトーナメントになりますと、11~12フィートくらいのセッティングになります。

さらに日本オープンレベルになってきますと、13フィート、マスターズが行われるオーガスタ・ナショナルでは、トーナメントの開催期間中は15フィート近くになるといいます。

これは下りのラインでは、パターが触っただけで20ヤード先のグリーンの外に出てしまうこともある速さで、アマチュアゴルファーには絶対に手に負えない超高速グリーンです。

私たちがこんなグリーンでプレーしたら、3パットどころか4パット、5パットが続出して、コースに大渋滞が起こるはずです。

スティンプメーターとは、なんぞや?

gettyimages/173217386

というわけで、私たちアマチュアゴルファーは、普段8~9フィートくらいの速さのグリーンでパッティングをしているわけですが、この「〇フィート」という数値の持つ意味を考えてみましょう。

その前にスティンプメーター(写真・上)の仕組みと使い方を説明しておきましょう。

スティンプメーターという計器は、ゴルフボールを転がすための滑り台のようなものです。

約90センチのV字形のレール状の棒で、グリーンに接地する端は、ボールが滑らかにグリーンを転がるように斜めに削られています。

もう一方の端から15センチほどのところにボールを止めておくノッチがあります。

使い方は、スティンプメーターをグリーンの水平な部分に置いて、ノッチのところにボールを置きます。

そして、ボールがノッチから外れて、自然に転がり出すまで端を持ち上げていきます。

ボールが転がり出すのはだいたい26センチほどの高さまで来た時で、そのときの角度は約20度になります。

こうしてグリーンでボールが転がった距離を計測して、次にスティンプメーターの向きを180度変えて、同じようにその距離を計測します。

その平均がスティンプメーター値になるというわけです。

要するに、傾斜20度、長さ75センチの滑り台からボールを放して、グリーン上で転がった距離が、そのままグリーンの速さを表す数値になっているわけですが、ここで思い出してほしいのが、昔学校の物理の時間に習った「エネルギー保存の法則」です。

ゴルフボールは高低差10センチでほぼ1メートル余分に転がる

gettyimages/1178874798

ボールが転がり始める時の高さは、地面から約26センチです。

ということは、ボールの持つエネルギーが、最初は26センチという高さの「位置エネルギー」だったのが、その高さから落下することによって「転がるエネルギー」に変換されたことになります。

物理の時間に居眠りをしていた人、大丈夫ですか、ついてきてくださいよ。

仮に、スティンプメーター値が9フィート(2メートル74センチ)だとして、これまでの話を実際のパッティングに置き換えてみましょう。

まず、26センチの高低差のある下りのラインでは、パターヘッドがボールに触れただけで最低でも9フィート(2メートル74センチ)転がるということです。

ここで「最低でも」といいましたのは、ボールに触れた時に外部、つまりパターヘッドからエネルギーが加わわっているからです。

これを覚えやすいように法則化しますと、大まかにいってゴルフボールは高低差10センチにつき、ほぼ1メートル余計に転がるということになります。

例えば、10メートルの下りのロングパットで、高低差が30センチあったとします。水平なグリーンの7メートルのタッチでボールを打てば、カップに届くというわけです。

ラインの傾斜は、グリーンに上がる前に読んでおく

gettyimages/679121058

上りのライン時は、その逆です。

上りのラインは10センチの高低差につき、1メートル転がるだけのエネルギーを失ってしまうという計算になります。

つまり、先のラインを逆から打ってカップインさせるためには、水平なグリーンで13メートルのパッティングをするつもりでストロークすればいいというわけです。

この法則は、均一な角度で傾斜しているグリーンだけでなく、2段グリーンや3段グリーンであっても、あるいは下って上って、また下るというような複雑なアンジュレーションのグリーンであっても当てはまるのです。

要するに、グリーン上ではボールのあるところからカップまで、経路はどうあれ、高低差がどれだけあるのかだけをチェックすればいいのです。

ただし、ボールのある場所からカップまでの高低差というのは、いったんグリーンに上がってしまいますとわかりにくいものです。

ラインの傾斜は、グリーンに上がるまでにザッと読んでおくことが大切だと言われるのは、そのためなのです。

厳密に言うと、スティンプメーターで計測する時にはスティンプメーター自体の摩擦や、グリーンのコンパクション(硬さ)によってグリーン着地時に失われるエネルギーもあるので、9フィートの速さの時に26センチの位置エネルギーで必ず9フィート転がるというわけではないのですが、大まかな目安とお考えください。