プロゴルファー
こせきよういち
ショップで見つけたパターで大儲け!~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#87
メインストリームからちょっと離れたところに注目する私。
先週の米ツアー競技「ザ・ノーザントラスト」で一番興味を持ったのは、イギリスのティレル・ハットンのこの話です。
ハットンは先週の大会をフェデックスカップポイント順位=91位で迎えました。
今週の「デル・テクノロジーズ選手権」に進出するには、100位以内をキープしなければなりません。
ところが、土曜日に73の2オーバー(パー71)と低迷。大会の順位を33位タイから58位タイに後退させ、ちょっと窮地に。
不振の原因はパッティングでした。
18ホール中14ホールでパーオンしながら、バーディはわずか1個。ストローク・ゲインド・パッティングのスタッツは、その日、全選手中最悪の-3.34でした。
そこで、ハットンが取った行動というのが面白い。
会場近くのショップに駆け込んだ
午後4時ごろ競技を終えたハットンは、最寄りのゴルフショップ「ゴルフ・ギャラクシー」に駆け込みます。
藁(わら)をもつかむ思いで、新しい相棒となるパターを探し、そしてグリップとともに購入したのです。
すると、これが大当たり!
翌日は63の好スコアをマーク。順位を20位タイ、フェデックスカップポイント順位も71位までジャンプアップさせました。
直後、上機嫌のハットンがツイートしたのが、上掲の画像です。そこには、
「これまでで最高の172ドルの買い物だった。今日は素晴らしいパッティングがいくつもあった。新しいパターはマジックのような働きだった」
といったテキストと、前日のショップのレシート画像がシェアされています。
ところで、ハットンが149ドル(約1万6000円)で自腹で購入したのは、昨年発売のピンのシグマG ダービー。
でも、ハットンはもともとピンの契約プレーヤー。
スタッフ(ツアーレップ)にオーダーすれば翌日には入手できたはずです。しかし、彼にはそんな余裕はなかったんでしょう。
ショップに駆け込み、一刻も早くいいパターを見つけなくては……。
レシートにある購入時間は4時59分。ラウンド終了後、わずか1時間のことでした。
はやっ!
39ドルで1000万ドル ゲット!
トッププレーヤーが自腹で購入したパターで大活躍、と聞いて思い出すのが、2010年の最終戦=ツアー選手権を制して、同年の年間チャンピオンに輝いたジム・フューリックです。
フューリックはプレーオフシリーズの第2戦「ドイツ銀行選手権」に出場するも、パッティングの調子が上がりません。
そこで、助けとなるパターを求めて会場近くの中古ショップへ。
300本ほどもあるショップの在庫のなかから見つけたのが、65ドルの値札が付いた「Yes! Golf」のソフィアパターでした。
中古のディスカウント品。でも、直感的に来るものがあったのでしょう。
しかも、それを買おうとするのがジム・フューリックと気付いた店員が、さらに値引きし、39ドルに。
「誓って言うけど、僕は値切ってないよ。そして、何の交換条件もなしだ」(フューリック)。
それはともかく、その後のプレーオフシリーズをこの中古ディスカウントパターでプレー。
そして、賞金1000万ドル(現在のレートで約11億円)のフェデックスカップを制したのです。わずか4000円余りのパターで。
変装してショップで購入
国内女子ツアーでも、今年6月の「ヨネックスレディス」で、2年ぶりのツアー優勝を果たした大山志保(クラブはヤマハと契約)の話があります。
その試合、大山が手にしていたのは、テーラーメイドのスパイダーでした。
そのことを記者から質問された大山の答えが、今年3月、地元・宮崎のゴルフショップに、
「マスクをして、女性らしい格好に変装して」自ら購入したというものでした。
複数メーカーのパターを試す中で「ビビッと来た」という運命的な出会いだったようです。
パター選びには、メーカーや値段に関係なく、こうした直感が大事なのかも。
用具メーカーとクラブの使用契約を結ぶトッププロでも、契約本数を制限したり、パターやドライバーを使用契約から除外する、といったケースは少なくありません。
そして、その中には、彼らのように自らショップに足を運んで、というプレーヤーもいるようです。