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こせきよういち
「臨時の動かせない障害物」がゲームをショーアップ~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#43
プロのトーナメント運営に欠かせないスコアボードや観客席、テレビカメラ用タワー、トイレ、そしてホスピタリティテントなどは、通常はローカルルールによって「臨時の動かせない障害物」に指定され、もしそれらがプレーの障害になる場合は無罰の救済が受けられることになっています。
そして、それはときに、プロのトーナメントならではの面白いシーンを生み出すことになるのです。
ケビン・チャペルのボールはテレビカメラのタワーの上に
「臨時の動かせない障害物」による障害で最近話題になったのが、先月のプレジデンツカップ(アメリカ対インターナショナルの対抗戦)最終日のケビン・チャペルです。
10番パー3。チャペルのボールは、こともあろうにグリーン奥のハザード内に建てられたテレビカメラのタワーの上に乗ってしまいました(動画は下記リンク先で見られます)。
ボールはわずかなスペースに巻いて置かれたケーブルの間にありました(冒頭の画像)。
ハザード内では、通常の「動かせない障害物」からの救済はありません。そのまま打つか、1ペナの救済を選ぶことになります。
しかし、「臨時の動かせない障害物」の場合はハザード内でも救済が受けられ、プレーヤーはその障害を避けられる最も近い(かつ、ホールに近づかない)地点から1クラブレングス以内に、無罰でドロップすることができます。
ただし、ボールはそのハザード内にドロップし、止まらなければなりません。
でも、チャペルはそのまま打とうと考え、競技委員に邪魔なケーブルを動かせるのか相談しました。
長い時間の協議のすえ、それが認められなかったのでしょう。
仕方なくチャペルはタワーを降り、救済のドロップを選択したのです。
果たして、注目のリカバリーショットの結果は?
……残念でした。
チャペルは、ドロップ後、つまりボールがハザード内にある状態で、不注意にもクラブをハザード内の地面に付けてしまったのです。
これはもちろんペナルティ。そして、マッチプレーの規則により、その瞬間、そのホールの負けとなったのでした。
何のためにタワーに昇り、競技委員と長々と協議し、そしてドロップしたのやら。とほほっ。
フィル・ミケルソンはホスピタルテントの上から、しかも……
「臨時の動かせない障害物」の救済を選ばず、そのままプレーしたエピソードといえば、2014年のザ・バークレイズ(現ザ・ノーザントラスト)でのフィル・ミケルソンが有名です。
5番ホールは距離291ヤードの短いパー4。
第2ラウンド、もちろんミケルソンは1オン狙い。
しかし、ボールは左に外れたあと、大きく跳ね、脇に建つホスピタリティテントの屋上に達したのでした。
ここでも無罰の救済は可能で、おそらくテントの手前のラフに特設のドロップゾーンがあったはずです。
しかし、そこにドロップするとボールはラフに沈んでしまうので、それを嫌ったミケルソンはそのまま屋上の床から第2打のアプローチ。
残念ながら、その一打はガードバンカーにつかまり、結果ボギーとなりました。
でも、そんなショットを見せてくれるミケルソンは大人気です。
話はこれで終わりません。
彼はなんと、翌日の第3ラウンドでも同じ5番ホールで同じミスを連発(下記リンク先の映像をご覧ください)。
またも屋上の床からリカバリーショットを打ったのでした。人気を獲るにもほどある?
そして、さすがミケルソン。今度は見事にグリーンをとらえ、バーディチャンスに着けたのでした(結果はパーでホールアウト)。
セルヒオ・ガルシアは無理無理(?)テントを障害に
今年はもうひと試合、「臨時の動かせない障害物」からの救済が話題になったゲームがありました。
米ツアーのプレーオフシリーズの第3戦「BMW選手権」の最終日のことです。
18番パー5で、セルヒオ・ガルシアの第2打はグリーン右奥に外れ、ボールはクリーク内の石の間に止まってしまいました。
幸い水はないため、そのまま打つことに。
しかし、まともには打てません。
そこで、一度グリーンとは反対の方向に打ち出すことにしたのですが、そうした場合、フォロースルーのクラブがホスピタリティテントに当たってしまいます。
そのため、ガルシアは競技委員に「臨時の動かせない障害物」からの救済を主張します。
でも、それは「不自然なスタンスのとり方」に思えたのでしょう。
競技委員との協議は20分間余にも及びました。それでも、最終的にはガルシアの主張が認められ、テントが障害にならない地点(そのクリーク内)にドロップ。
すると、そのボールはグリーン方向に打てるライになっていたのです。
こうして、このホールをなんとかパーとしたガルシアは、結果、ポイントランキングを25位(前週までは34位)にまで上げ、プレーオフ最終戦のツアー選手権に進出(30位まで)したのでした。
めでたし、めでたし?
今回は、「臨時の動かせない障害物」があればこその面白いエピソード集でした。